HIV陽性者が生きる力を培えるまちづくりセッション
HIV陽性者の生活に理解を深めたい方、HIV陽性者に支援的なまちづくりに少しでも関心の ある方、病気や障がいのある方々とともに暮らすことを目指したい方、一般の方々が、業種を問わずに集まり、HIV陽性者が暮らしやすいまちづくりはどうやって実現できるのかを考えるセッションです
■日本のHIV陽性者はどんな状況に置かれているのでしょうか
~セッションの背景
日本にはHIVに感染している人(HIV陽性者)が3万人近くおり、毎年千五百人以上の新規HIV陽性者が報告されています。しかし、ふだん私たちが「まわりにはHIV陽性の方がいないな」と感じるのは、そうした方々が、自分がHIV陽性だと周囲に打ち明けると差別されてしまうと恐れ、じっと黙っている場合が多いからです。
また、HIVに感染すると死んでしまう、そんなイメージを持っている方も多いかもしれませんが、実際には治療方法は大きく進歩しています。今では、完全に治るわけではありませんが、医療機関に通い適切な治療を受けさえすれば、HIV感染していない人々とほぼ同じくらいに健康を維持し元気でいられるようになってきています。
■HIV陽性者の方々が暮らしやすくなるために私たちには何ができるのでしょうか
~セッションの趣旨
HIV陽性者の日々の暮らしのなかでは、差別や偏見(スティグマ)や就労、経済などの社会的な課題、メンタルヘルスや生きがいなどこころの課題など、さまざまな課題があります。これらは、HIV陽性の方がひとりで解決することはできません。地域に住む様々な立場の人々が支えることができるはずです。
このセッションでは、HIV陽性者が生きやすい社会・地域づくりをするために、課題をどう乗り越えていったらいいのか、お互いに話しあって解決策を出しあいます。そして、それらを共有し、新たな繋がりをもちながら、出しあった解決策を地域で実践する、そんな場にしています。
■異業種の皆さんで話し合ってアイデアを出し合います
~セッションの内容
このセッションは、6時間半の1日コースとなっています。
お互いの自己紹介、HIV・エイズの基本知識のレクチャーからはじめ、HIV陽性者対象の大規模調査結果を皆で共有したのち、HIV陽性者の方から「感染告知から現在まで」のスピーチをしてもらいます。これらを踏まえて、課題解決のためのアイデア出しを、まずは個人ワークでした後に、グループワーク「各課題を解決するためのアクションにはどんな方法があるのか?」を行い、アイデアをアクションプランにするためにどう改善したらいいのか、皆で考えます。
HIV Futures Japanプロジェクトが主催で行っているこのセッション。2016年は2か所で開催しました。今後も全国各地で開催する予定です。開催日が決まりましたら、お知らせいたします。
■1年後の「あなた」に向けたアクションプラン
~セッションの成果
毎回、グループワークでは、皆さんの対話を通して知恵とアイデアを出し合い、それらをまとめ、HIV陽性者にとってやさしい社会、ひいては病や障がいのある人々への温かいまなざしのある社会づくりのためのアクションプランを立ててもらい、発表してもらっています。
ここでは、参加者が当日に立ててくれたアクションプランをご覧になれます。1年後には、「どれくらい達成できたのか?」を、それぞれの参加者にたずね、それもまたここでご紹介する予定です。
HIV陽性者が生きる力を培えるまちづくりセッション@福岡 2016年8月1日
アクションプラン集
■開催日時:2016年8月1日(月)
■開催場所:サン・ライフホテル
■共催: Love Act Fukuoka
○アクションプラン
- ありきたりな結論ですが、差別・偏見をなくす。許さないような輪を身近な人から広げるしかないという結論に。そこで、HIV/エイズ関連図書を読む読書会をします。(Iさん)
- エイズの検査に来る人に、正しい知識を持って、正しくこわがってもらえるような知識の普及に努めていきたい。(Mさん)
- 当事者のライフストーリーを直に聞く機会を増やすこと。その話を聞いた参加者が、心を動かされ、その動かされた思いを伝えること。HIVが「今やコワくない」からではなく、すべての病気について、そのことを理由にする差別が許されないことを、ひとりひとりが正しく学べるようにすること。(Kさん)
- 地域を越えて(当事者)交流会、支援者同志の交流、電話相談など色々な職種の方につなげて、当事者の方に寄り添う。(Mさん)
- HIV患者に関わっている他の人(医療関係者、電話相談を受ける人等)と連携をとって、知識・情報を更新しつつ、自分ができることを(経済的に困窮した時の支援制度や、将来年老いた時、更には相続等も含めた法的な支援)を探れたら良いと思っています。特に、誰にも絶対知られたくないと自発的につながりを持たない人に関われたらと思っています。注:1年後の実現はほぼ不可能です!もう数年かかると思います。(Kさん)
- 自分の生活範囲とは少し離れた地域で陽性者同士の交流会を開催し、支援したいと思っている気持ちが強い人も参加させてもらい、支援者同士でもつながる。支援者グループでも得意分野があるので、お互い支え合い、支援していく。(Sさん)
- 相続問題や老後の生活など専門の方などといっしょにやっていきたい。(Hさん)
- 電話相談・支援の職場で相談員仲間を変えていく!HIV陽性であることを過度に受け止めないように。正しい情報を伝えていき、偏見をなくすように。そこから少しずつ社会を変えていくように。(Gさん)
- 企業として、支援、学習会、雇用をすすめる。個人としても正しい知識を対話で広げる。(Iさん)
- 職場の障害者枠を利用して入職していただき、より深く知る機会にしていただく。(Nさん)
- 当事者が発信しやすい環境づくりと、当事者を守る現場づくり ・会社側がメリットとしてとらえて社会にどうアプローチするか ・社会の正しい認識の教育。(Eさん)
- HIVについての正しい知識を持つ ・周りの人がHIVについてどのように考えているのかを知る ・周りの人にHIVについて正しい知識をもってもらうように働きかける。(Wさん)
- ・HIVを専門としない医療者への教育機会の継続と創出、・医療・福祉学生への卒前教育、・今回のメンバーとの連携(Mさん)
- 拠点病院などの勉強会等を利用し、地域医療スタッフの知識のアップデイト ・拠点病院から地域へのネットワークづくりにも少しでも広げられたら。(Sさん)
- 医療の世界で、専門のことしか知らないことが多いので、パンフレットなどを病棟に設置するなど、正しい情報を医療者が得る橋渡しをする。自分自身がまず、学び、世の中の仕組みを知る。(Tさん)
HIV陽性者が生きる力を培えるまちづくりセッション@浜松 2016年10月10日
アクションプラン集
■開催日時:2016年10月10日(月・祝)
■開催場所:呉竹荘
■共催:特定非営利活動法人 魅惑的倶楽部
■後援:浜松市市民協働センター
■協賛:株式会社呉竹荘
○アクションプラン
- 知人・友人にHIV/AIDSの冊子を配り読んで頂く。また、知人・友人を集めてHIV/AIDSの勉強会をする。(Oさん)
- 自身の所属するNPO法人でHIVの情報を共有する(伝える)。関係者・当事者が何で悩んでいるのか。差別や偏見がないように説明する。(Hさん)
- 知人・友人にHIV/AIDSについて知っている事や経験を伝える。(Oさん)
- HIVスピーカーの人に直接会いに行ってお話を聴く。HIVの活動(講演会など)に参加する。友人とHIVについて話す。まずは、家族にHIVの事を話す。(Yさん)
- 勤務している公園にポスター掲示をする。チラシ等を置いて幅広い年齢の人にエイズについて正しく知ってもらう。(Oさん)
- 不特定多数の人が集まるイベントでの啓発活動、例えばクリスマスイルミネーションイベントでレッドリボンを作り設置する。(Sさん)
- 長期休暇等で出たポスター・作文コンクールの自由課題として、HIVに関連したものを、自分の意見や今日の講演での学びを交えて他者へ発信していく。(Dさん)
- 高校生は高校生にだからこそできることを進めていきたい。同世代には自分から進んで話せるので、自分の知っている事を広げるだけじゃなくて間違っていることとか知らないことを知ってもらえるようにしたい。(Aさん)
- HIVに関わるポスターを大学祭の展示に掲示する。普段関わる人達がもしかしたらHIV陽性者かもしれないという想像力を常に持っておく。(Kさん)
- 仕事で出逢う保健師にHIV陽性者の訪問看護ができることを伝える。または、HIVサービスの相談をして下さいと伝える。(Wさん)
- できる限り毎日洋服や持ち物にレッドリボンを身に着け、「赤いリボンって何?」とHIV/エイズについて話すきっかけを作る。また、自分は差別をしないことを表現する。(Iさん)
- CSR活動を行う。社内に窓口を設ける。学習会を開き、当事者の方のお話しを聞く場を設けHIV陽性者の方に対する正しい知識を身に付ける。(Sさん)
- CSR活動の一環として啓発活動を実践。“自分ごとにする仕組みづくり” HIV・AIDSに関わる情報・知識を共有できる場や時間をつくる。 ↑
・わからないことは自分と違うことと位置づけ差別につながりやすい。
・何に気をつければいいかわからないと“避ける”につながりやすい。(Iさん) - CSR活動の一環として啓蒙活動を実践していく(知識習得・相談窓口の新設)。一般的に開催されている勉強会や啓蒙活動に積極的に参加して自分自身の知識を広めていく。(Fさん)
- CSR活動の一環として啓蒙活動を実践していく(知識習得・相談窓口の新設)。
1.本日のような集会に参加
2.職場内での学習会・座談会開催
3.看護ケアマニュアルに加える(Sさん)
冊子「HIV陽性者の生活を知る」ができました。
HIV陽性者の日々の暮らしがどのようなものかについては、一般市民はあまり知らない・・・まちづくりセッション実施を通じてそのことを強く感じさせられました。
そこで、HIV陽性者の現状を、より多くの方々に身近なものとして感じていただき、理解を深めていただくために、冊子「HIV陽性者の生活を知る」をつくりました。今後のまちづくりセッションでも本冊子を活用していく予定です。HIV陽性者とその周囲の環境、社会のありかたなどについて考えるきっかけになることを願っています。
なお、「HIV陽性者の生活を知る」は以下からダウンロードできますが、紙媒体での冊子ご希望の方は、本ウェブサイト内「お問い合わせ・ご連絡」までお知らせください。
「HIV陽性者の生活を知る」PDFファイルダウンロード
謝辞
この場をお借りして本セッションに協力・参加いただいた多くの方々に改めてお礼を申し上げます。
なお、「HIV陽性者が生きる力を培えるまちづくりセッション」は、以下の助成を受けました。
『2015年度ファイザープログラム~心とからだのヘルスケアに関する市民活動・市民研究支援』